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モルフの定義


編集履歴

エキゾチックアニマル業界では単一遺伝する遺伝子や、場合によっては品種を指してモルフ(morph)と呼ぶ事が一般的です。
品種やライン名をモルフと表記する場合が少なからずありますが、ライン名をモルフと表記するのは間違いであるという意見もあり、共通認識としてのモルフという用語の定義があやふやであると感じていました。

そこでこのモルフという用語は学問上どう定義されているのか調べた所、恐らく現在では俗語でありちゃんとした定義がないであろう、という事が解りました。

種より下位の階級として使われていた

俗語と書きましたが、モルフという用語は以前は学問上でも使われていた様です。
動物分類学の論理という本では以下のような記載があり、1961年に種より下位の分類がリジェクトされた事が解ります。

実は動物学者は異常(aberration)、型(morph)、品種(form, breed, race)、変種(variety)、そして品種の中に更に系統(strain, line)などの限定詞のもとに様々な種内変異に学名を付けていました。
...
ところが、国際動物命名規約の第1版ではそれらの種内階級を除外し, ...

動物分類学の論理 P.134 馬渡峻輔, 1994

またMullerの3原則でもamorph, hypomorphなどの表記がされていた模様です。

最も古くから使われ、広く浸透しているものにMullerによる分類がある。Mullerは、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析の結果から、対立遺伝子を1)完全に遺伝子の活性を失った対立遺伝子であるアモルフ(amorph) 、2)部分的に遺伝子活性を失ったハイポモルフ(hypomorph) 、3)遺伝子活性が上昇したハイパーモルフ、4)野生型の機能を妨げるように働く アンチモルフ (antimorph) 、5)新たな機能を獲得した ネオモルフ (neomorph) に分類しており、この分類法は今でも遺伝学の多くの場面で使われている。

対立遺伝子 - Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E7%AB%8B%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90

ですが筆者の持つ他の遺伝学・育種学の書籍にはモルフという用語についての記載はありませんでした。
よって現在の遺伝学・育種学ではモルフという用語は使用されておらず、国際動物命名規約によって除外されてから俗語になったと考えられます。

世間への定着

ハーマン・J・マラー - Wikipediaによると、氏は1890年12月21日 - 1967年4月5日の間に存命しており

ショウジョウバエに対するX線照射の実験で人為突然変異を誘発できることを発見した。この業績により1946年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。精子バンクの提唱者でもある

とあります。
このショウジョウバエの実験は1927年に行われ、Mullerの三原則として広く世に知られるようになりました。

この実験から国際動物命名規約が制定されるまでの1927年~1961年の間に、特徴的な遺伝子を意味する用語としてモルフが世の中に定着し、現在でも使われているものと考えられます。

俗語としてのモルフの定義

学問においてモルフという用語は現在使われていないようですが、だからといって我々も直ちにモルフという用語の使用を辞める必要は無いと思われます(またそれは非現実的でしょう).

ですが俗語としてのモルフという用語が、具体的に何を意味するのかを明確にする必要はあると考えられます。

  • 元々Muller氏の実験では突然変異を扱い、いくつかの対立遺伝子に対してamorphなどの表記をしていた事
  • 品種や系統(ライン)には育種学で別の定義がある
  • 形質が遺伝的に固定化されていないプロジェクトにもモルフ表記されるケースがあり、消費者がその個体の特徴が遺伝すると勘違いする

これらの事から、モルフという用語の意味に品種・系統・プロジェクトを含めるのは適切ではないと考えられます。
また対立遺伝子という概念がまだ一般的ではない事、現在モルフという用語が使用されているケースを考えると

  • 単一遺伝する遺伝子の名称
  • 複数の単一遺伝する遺伝子の組み合わせの名称(いわゆるコンボモルフ)
  • 品種名・系統(ライン)名・プロジェクト名は含まない

とするのが妥当と考えられます。

重要なお願い

筆者もこのサイトも、エキゾチックアニマル業界で使用されている言葉を定義して強制する立場にはありません。
前述した定義に外れた意味でモルフという用語を使用されている方を、この記事に記載さている定義を用いて口撃することは辞めてください。