野生動物が人類によって家畜化されると、家畜には野生動物に見られない形態変化が現れる。
これは野生集団では生存に不利であったゲノム上に生じた突然変異が、家畜化されることによって人類の庇護下で保護され、更に選抜・淘汰された結果である。
家畜化に於いては、人類が求める様々な形質が変化することがわかっており、その代表的な形質が毛色、体格・体型、生殖能力、強健性などである。
毛色は野生動物と家畜の間で認められる顕著な変異のある形質といえる。野生動物の毛色は種内でほぼ同一であるのに対し、家畜では様々な毛色が観察される。
この理由として、、野生動物では毛色の変異が自然環境下における生存に不利になることがある。
毛色の変化を起こした大部分の被食動物は捕食動物の標的になりやすく、捕食動物は被食動物に気づかれるため餌が取れない。
その結果、毛色の突然変異は自然淘汰によって自然集団から失われる。
一方、家畜を管理下においている人類は突然変異によって生じた毛色変異に興味を示す。
その結果、新たに起こった毛色変異は人類の手で保護、選抜されることになり、集団に保持され広がる傾向にある。
また体格や体型も家畜化後に変化する代表的な形質である。
一般に大型家畜は小型化し、中小動物は大型化する傾向にある。
例えばウシは家畜化後に体格が小さくなっている事が出土した骨などから認められており、これは小柄な個体が人類にとって取り扱いが用意であったためと考えられている。
面白いことに、人類は近代に入って肉量を多く取るため、再びウシを大型化する方向に育種改良を行ってきている。
このことは、家畜に対する人類の要求があれば,動物を小型化することも大型化することも可能である事を示している。
家畜化に伴い、性成熟が早熟になることが知られている。
その生殖能力の変化としては、産子数、乳量、発情周期の変化などがある。
一方で、人類が1つの形質に対して選抜を続けると、他の形質に影響する相関反応が認められるようになる。
例えば産卵鵜では、産卵数が多くなると卵重が減っていく。
このような問題を解決するため、人類は家畜の遺伝的改良を進め、その結果新しい家畜品種が生まれる事になる。
動物育種学が学問として専門化し、様々な家畜の改良技術が日夜進歩する理由がここにある。
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