まず種と亜種は分類学において論理的な定義があります([重要] あくまでも論理的な定義であり、実状は後述します)。
それは別種を交配しても生殖が出来ず、亜種は生殖が出来るという違いです。
ヒトとチンパンジーの間に子供が出来ない、ネコとイヌの合いの子は存在しない、だからヒトとチンパンジー、ネコとイヌは別種であると言えます。
これをマイアは次のように種を定義しました。
「種とは、実際的にも、可能性においても、互いに交配しうる自然集団である。それは他のそのような集団から生殖の面で隔離されている」(シンプソン, 1974)
これは遺伝学による「個体と集団の間の関係を遺伝的にとらえる」という成果を踏まえた上での定義になります。
- 個々の種内の個体間では有性生殖を通じて必ず遺伝子の混ぜ合わせが起こり、親と全く等しい子は生まれない
- 個々の種は突然変異の出現と環境圧によるそれらの淘汰過程を常に内包している
- したがって、種内変異はけっして異常でも悪しきものでもない
- よって個々の種が遺伝的につながった個体の集団であるあかしのひとつとして理解されるようになった
種と亜種の論理的な分類
以下では亜種、別種の交配・交雑について記載しています。
雑種の生存・生殖能力の有無について触れていますが、交雑を推奨するものではありません。
交雑についてはロカリティ、交雑、生殖隔離を参照して下さい。
亜種同士の交配と子の生殖能力
例えばヒョウモントカゲモドキはヤモリ下目トカゲモドキ科ユーブレファリス属マキュラリウス種ですが、macilarius属には更に以下の亜種があります(E.はEubulepharis, m. はmacilarius).
- E. m. macularius
- E. m. montanus
- E. m. fasciolatus
- E. m. afghanicus
- E. m. smithi
E. m. maculariusは基亜種といい、他はそれぞれE. m. maculariusの亜種となります。
これらは分類学の論理的な定義の上では交配・生殖可能であり、交雑個体の生存能力・生殖能力も問題ないであろうという想定・仮設に基づき亜種と分類されています。
別種の交配と子の生殖能力
またEubulepharis属の中には以下のような種があります。
- E. hardwickii
- E. angramainyu
- E. fuscus
- E. macularisu
- E. satpuransis
- E. turcmenicus
これらは種が違うので、分類学の論理的な定義の上では交配したとしても生殖能力が無いであろうという想定・仮定に基づき別種と分類されています。
ここでいう生存能力がないとはそもそも子供が生まれないというケースの他に、交雑個体が生まれたとしても生存能力が低い、生殖能力が低い・無い、累代すると生存・生殖能力に問題がでる様なケースも含み、これらを生殖隔離機構と言います。
実際の分類方法
前節まででは「このように分類すべき」という定義を述べました。
しかし分類する際に実際にこれらを交配し、子供の生存能力・生殖能力を見る訳ではありません。
「実際に生殖能力があるのか、または無いのか」は自然環境の変化などで、各個体群の生息地域が重なり交配が進まないと不明です。
ではどの様に判断しているかと言うと、人間が見た目で判断している事が多いです.
よって種に分類するか亜種に分類するかは、実際には分類学者の経験に依る所が大きいといえます.
この様に本当は生殖が隔離されているかで分類すべきなのに、実際には見た目で判断しているため別種だったものが亜種になったり、逆に亜種だったものが種に引き上げられたりします。
分類と交雑について
上述により解る事は種も亜種も多くの場合は人間が見て解る形質で分類している、また分類は流動的という事です。
現在は亜種の無い種についてもこれから亜種に細分化される事も、逆に亜種がまとめてなくなりそれぞれが種になる事も有りえます。
人間が見た目で判断した分類だけを参考にするのではなく、出来れば採集地などを守って交配するのが望ましのはこれらの事があるからです。
この問題をより詳しく知りたい方はロカリティ、交雑、生殖隔離を参照して下さい。